世界保健機関(WHO)は2022年1月1日付けで世界の医療機関や研究機関向けに策定されるガイドラインICDを30年ぶりに改訂した。最新の第11版「ICD-11」では、「燃え尽き症候群」が業務上疾病として新たに認定された。従業員の突然の意欲や熱意の消失は生産性の低下や離職という形でこれまでも企業を悩ませてきたが、今回の改訂により法的・財務的リスクが生じる可能性がでてきた。

 

今回の改訂でWHOは燃え尽き症候群を「心の健康問題や精神疾患」という分類から「適切に管理されていない慢性的な職場ストレスから生じるもの」と再定義した。職場に関連する現象と定義づけられたことで、企業に直接的・間接的責任があるとの解釈が可能になる。燃え尽き症候群の特徴としてWHOは以下の3点をあげている。

  1. 疲労感・脱力感
  2. 仕事への忌避感の増加、または仕事に関する否定的ないし冷笑的な感情
  3. 生産性の低下

 

ブラジル厚生労働省によると、国内では社内規程やシステムの更新が必要であり、ICD-11の適用までには時間がかかるとのことだが、今後燃え尽き症候群として診断された社員は、他の業務上傷病と同様の労働・社会保障の権利が得られることになる。

 

燃え尽き症候群と診断された社員は15日間の療養のための有給休暇が与えられ、診断により療養期間が15日を超える場合はINSS社会保障の受給が可能で、職場復帰後12ヶ月間は正当な理由がない限り解雇は禁止される。より深刻なケースで労務不能になった場合、INSSの認定を受けることにより業務上障害による退職金を受け取ることができる。

 

労働裁判において、これまで企業側に責任があると解釈されることはあったが損害賠償請求が認められることは稀だった。しかし今回の改訂により、医師から燃え尽き症候群と診断された場合、企業の賠償責任が追求されるようになる。裁判では、医師の診断書、従業員の業務歴、職場環境の評価に加え、目撃者情報、モラルハラスメント・非現実的なノルマ・強引な要求など発症の要因となった証拠に基づいて企業の責任が判断される。

 


※参考記事
https://g1.globo.com/economia/concursos-e-emprego/noticia/2022/01/11/sindrome-de-burnout-e-reconhecida-como-doenca-ocupacional-veja-o-que-muda-para-o-trabalhador.ghtml
https://exame.com/carreira/burnout-vira-doenca-do-trabalho-em-2022-o-que-muda-agora/

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